デットエクイティスワップ
“デットエクイティスワップ(DES)”
なんかかっこいい名前ですが、ちらっとでも耳にしたこと、あるでしょうか?
- デット = DEBT 借入金
- エクイティ = EQITY 資本
- スワップ = SWAP 交換
「債務の株式化」ともいわれています。
債務超過にある企業の債務を、債権者がその債権を現物出資することで株式化し、負債を削減させることで、企業再生の手段として利用されています。
このメリットは、
- 負債を減少させ資本を増加させることにより、財務体質の改善が図れる。
借入金債務のままなら、いずれ返済しなければなりませんが、株式化すれば返済の必要はなくなるというわけです。 - 債権者としては、貸付金等の債権に変えて債務者の株式を持つことで、 株主として当該企業の再建に関与することができる
などがあり、以前は、経営不振な大企業に、銀行がその貸付金を株式に振り替えることによって、当該企業の財務内容を改善しつつ経営にも関与し、再建を進めるといった場合に活用されるケースがほとんどだったようです。
会社法により中小企業でも活用し易くなった。
このDES。会社法施行でその手続きが簡素化※され、中小企業でも利用されることが多くなりました。
会社法施行前
債権の額面が500万円超となる場合、検査役の調査又は弁護士等による財産額が相当であることの証明が必要だった。(調査期間・費用がかかり煩雑)
会社法施行後
500万円超の金銭債権でも、当該金銭債権の金額・債権者名が記載してある会計帳簿(総勘定元帳など)を添付すれば、検査役や弁護士等の証明が不要となった。(会社法207条9項5号)
ただし、
・債権の弁済期が到来していること
(弁済期が未到来であっても、期限の利益を放棄すれば可能)
・株主総会で決議した当該金銭債権の価額が負債の帳簿価格を超えない
ことが必要。
その他は通常の増資の手続きとほぼ一緒。
さらに、この「手続きがやりやすくなった」といううわさが波及し、最近では1人株式会社などの小企業の増資の際にも、活用されるようになっています。
事業資金の不足を補うために、社長が自分のお金を会社のために使うことはよくあることです。この場合、このお金は「短期借入金」として負債に計上します。
この「短期借入金」(社長からみたら貸付金という債権)を「現物出資」することにより増資するというわけです。
増資のために新たな資金を準備しなくていいので、使い勝手はありそうですね。
営業許認可の取得や更新などで、資産要件が許可要件となっている場合などに活用できそう。
資産の部 | 負債・純資産の部 |
---|---|
現金預金 5,000
その他資産 23,000 |
【負債の部】
短期借入金(社長貸付) 6,000 その他の負債 20,000 負債の部合計 26,000 【純資産の部】 資本金 3,000 利益剰余金 △1,000 純資産の部合計 2,000 |
資産の部合計 28,000 | 負債・純資産の部合計 28,000 |
社長貸付金6,000でDESすると…
資産の部 | 負債・純資産の部 |
---|---|
現金預金 5,000
その他資産 23,000 |
【負債の部】
短期借入金(社長貸付) 0 その他の負債 20,000 負債の部合計 20,000 【純資産の部】 資本金 9,000 利益剰余金 △1,000 純資産の部合計 8,000 |
資産の部合計 28,000 | 負債・純資産の部合計 28,000 |
純資産を増やすことができますね。
税金に注意
DESによって資本に振り替えられる債務については時価評価することとされており、債務超過の会社の場合、状況によっては「債務の時価=ゼロ」とみなされ全額が債務免除益として認識され、課税される恐れもあるようです。
実務上の手続きは簡単になったとはいえ、このような税金面のリスクもあるので、税理士さん等の助言も得て、実施することをおススメします。